劇場からの失踪

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『夏への扉 -キミのいる未来へ-』最後ミスチル流せばよかったのに 劇場映画批評24回

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題名:『夏への扉 -キミのいる未来へ-』
製作国:日本
監督:三木孝浩監督
製作年:2021年

 

ロバート・A・ハイライン原作の古典的な有名SF作品『夏への扉』を基に三木孝浩監督が再構成した本作。主人公高倉宗一郎を山崎賢人、その妹であるヒロイン松下瑠子を清原果那が演じている。

自分としては『フォルトゥナの瞳』も『思い、思われ、振り、振られ』を楽しめず、また予告の雰囲気からも非常にやばい匂いを感じていたが、意外にもそんなことは無かった。

では早速、本作について語っていきたいと思います。

 

目次

 

ストーリー

将来を期待される科学者の高倉宗一郎は、亡き養父である松下の会社で研究に没頭していた。
早くに両親を亡くしずっと孤独だった宗一郎は、自分を慕ってくれる松下の娘・璃子と愛猫ピートを、家族のように大事に思っていた。
しかし、研究の完成を目前に控えながら、宗一郎は罠にはめられ、冷凍睡眠させられてしまう。

目を覚ますと、そこは30年後の2025年の東京、宗一郎は研究も財産も失い、璃子は謎の死を遂げていた―
失って初めて、璃子が自分にとってかけがえのない存在だったと気づく宗一郎。
人間にそっくりなロボットの力を借り、30年の間に起こったことを調べ始めた宗一郎は、ある物理学者にたどり着く。
驚きの事実を知った宗一郎は、再び1995年へと時を超える。
ただ、璃子を救うために―

 引用元URL:Story | 映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』オフィシャルサイト

 

 

 ビビッときた世界観

自分がまずビビッときたのは、昭和のレトロな映像感が始まる導入である。当時のテレビのニュース映像のようなノイズ感が堪らないし、何よりも少し現実の歴史とは違う要素が盛り込まれて過去だが近未来的な世界観、つまり「来るかもしれなかった未来へのノスタルジー」が詰まった過去が非常に良かった。また、2025年の世界もほんの少し先の未来という塩梅も良い。そのように全体として、映画の世界観を構築している美術や空気感がとても好みに仕上がっていた。

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やっぱり期待は越えられず

正直上記した部分や全体として丁寧に紡がれたバランスに関しては文句なしではある。ただ、やはりストーリーの予定調和感、結末が早々に見えて、そこに向けて作業を坦々とやっていく感じがつまらない。同じ時間遡行ものでも坦々とやっていく部分に一種の快楽がある作品(『ハッピーデスデイ』など)であれば問題ないのだが…

その作業感があるせいで、主題であるはずの「大切なものが奪われていく運命に諦めずに抗う」という展開が出来ていない。瑠子がそもそも"死んだ"という印象が観客に伝わってこない。こちらはそもそもどうせ生きてると高を括っているのに、作品内でも「爆破に巻き込まれてるかも?」ぐらいのニュアンスに収まっているので、山崎賢人の過去へのタイムスリップは「瑠子に逢いに行く」程度の強度の行動にしか映らない。

 

また「アラジン」の下りやら「定食屋」の下りも寒い。もし原作にある展開なのであれば、もう少し捻ってほしかった。"未来を変えるために過去を変える"というタイムスリップ作品のテンプレをただ張り付けたような展開になっていて退屈だ。

 

 

 

総評

これまでの三木孝浩作品の中では一番面白い作品であった。ただ同日公開の『Arc』と比べると"いつもの"邦画と言われる域を出ていない。ピートはかわいい。